ナチスドイツによるユダヤ人虐殺の責任者、アドルフ・アイヒマン
ユダヤ人虐殺の責任者と聞けば、それはさぞ残忍な人物のはずだと誰もが想像します。
しかし、裁判にかけられたアドルフ・アイヒマンというその男は、見るからに悪人というわけではなく、ごく普通の人間に見えたといいます。
この違和感を受け、アメリカの心理学者スタンレー・ミルグラムはとある仮説を立てます。
彼はアドルフが『特殊な環境で権威者に命令され続けたことで、平気で残虐なことを行う精神状態になっていった』と推測しました。
つまり、これは条件次第で誰にでも起こり得ることなのではないかと、ミルグラムは考えたのです。
そこで彼は1962年、後に語り継がれることとなる恐ろしい実験を行いました。
その内容は以下の通りでした。
つまり『電気を与える役』の人物が本当の被験者ということです。
実験が始まり、問いに正解できなければ役者は悲痛の声を上げ、何度も停止を訴えました。
電圧がどんどん上げられて(そう思わされている)も、手を止める被験者は一人もいなかったといいます。
途中で被験者が躊躇すると、白衣を着た男が現れ、実験の続行を促します。
結局、もし本当に電気が流れていたとしたら命に関わるほど大きな電圧に達していました。
ミルグラムはこの実験を通し、『人間は考えることを止めると、どんなことでも実行し得る』と示しました。
参照
The Milgram Shock Experiment