上杉謙信と武田信玄の一騎打ちは存在しなかった?
川中島の戦いのハイライト
上杉軍と武田軍が数回にわたって衝突した「川中島の戦い」。
その中でもっとも有名なエピソードといえるのが、謙信と信玄の一騎打ちです。
小説やドラマではお馴染みの描写ですが、近年ではこの一騎打ちが嘘だった、という説が有力なのです。
おばたかげり一騎打ちの様子を伝えているのは、武田家家臣小幡氏の末裔小幡景憲が江戸時代初期に編纂したとされる『甲陽軍艦』です。
武田家の戦歴や戦法を記録した軍学書で、 川中島の戦いのエピソードの多くはこの書に依ります。
しかし、『甲陽軍艦』は記述に誤りや記録との矛盾が数多く、一次史料としての価値は決して高くないのです。
川中島の有名なエピソードも、再検証の結果、多くが否定されているのが現状です。
そもそも謙信は上杉軍の総大将にして当主です。
当時の常識からすれば、もっとも安全な最後尾で指揮を執るのが普通であり、陣頭指揮をしたとは考え難いでしょう。
史料自体の信憑性の低さもあり、史実だったとは考えにくいのです。
ただ、一騎打ちはまったくの脚色なのかといえば、そういうわけでもないようです。
別の武将だったとする説や、川中島ではなく「御幣川(おんべがわ)の戦い」で信玄と上杉方の兵が衝突したとの説があり、研究者による検討が進められているところです。
参考 川中島の戦い