テレビショッピングの返品率はほぼ0%!その理由とは

人は『自分が所有するものは、それだけで価値の高いものだ』と思う

通信サイトで買い物をすることが多くなった昨今、商品の評判をすでに購入した人のレビューで確認するのが主流です。

コスパは良いか、使い勝手はどうかなどのリアルな口コミをコメント内容で知ることが出来ます。

では、そのコメントの信憑性はいかほどのものなのでしょう。

行動経済学の観点からすると、購入者の感想には強いバイアスがかかっていると言えます。

それが保有効果です。

保有効果とは、自分がすでに買ったものや持っているものには余計に高い価値を感じ、手放したくないと感じる現象を言います。

自分のものは価値あるものだと思い込むため、商品のレビューでは『良いこと』を書きたくなります。

実験でも証明されている保有効果

このバイアスを証明するアメリカのコーネル大学経済学部で行われた実験を紹介します。

学生をAとBの2つのグループに分け、Aグループには大学のロゴ入りカップをプレゼントしました。

『カップを持っているAグループ』と『持っていないBグループ』で競売をし、Aには『いくらなら手放しますか』、Bには『いくらならこの商品を購入しますか』と質問をしました。

すると、Aが示した価格は、Bが示したものの2倍以上の金額だったといいます。

つまり、カップというさほど高価でないものだとしても、それを所有しているだけで、していない場合に比べ価値が高まるということです。

同じ価値なら『儲かる』より『失う』ほうがデカい

保有効果が起こる根本的な原因は、人の『損をしたくない』という心理です。

新しく何かを手に入れることで得られる喜びより、既に持っているものを失うことで生じる苦しみの方が大きく、味わいたくないと思うため、一度手にしたものは手放したくないと考えるのです。

また、お金に関する選択の際は、私たちは新しいものに手を出すより既にしている投資を続けたいと思う保守的な傾向があります。

これも、既に持っているものを実体以上に評価する保有効果が関係しています。

人は理論ほど合理的には動かない

従来の経済学では、『手放す代わりに得られる最小の金額』と『手に入れるために払える最大の金額』には、大きな差はないと考えられています。

しかし、行動経済学が強烈に指摘するのは『人はそれほど合理的には動かない』という点です。

インターネットの商品レビューに溢れる『めちゃくちゃ良いです!』『オススメです』などの称賛の言葉は鵜呑みするのではなく、吟味することが大切です。

通販サイトなどで『気に入らなくても10日以内なら返品可能』『効果を感じられなければ全額返金』といった条件につられ買い物した経験はありませんか。

インターネットで買い物をする場合、現物を見て買えないため、慎重になりがちです。

しかし、高額なものであったとしても、無料で商品のお試しができると考えれば、注文へのハードルはぐっと低くなり、ついポチってしまうのです。

このようにして、 いったん私たちのもとに商品を届ける商法は、保有効果を巧みに利用していると言えます。

試しに注文してみただけだったはずが、使ううちに愛着があいちゃ手放すのが惜しくなってくるのです。

実際に、通販サイトで買った商品が返品される率は2~4%程と低く、テレビショッピングではほぼ0%と言われています。

返品可能にして上がる売り上げの方が、返品でかかるコストよりも多くなりますから、売り
手にとっては良いことしかないのです。

ソーシャルゲームにも利用される保有効果

スマホの台頭で人気が上がったソーシャルゲームの消費者心理にも、保有効果で説明できる事柄があります。

ソーシャルゲームの中には、キャラクターを自分で作り、他にはない自分だけの街やアイテムなどを作れるものが多くあります。

自分が手塩にかけて手に入れたアイテムや武器の価値は自分の中でどんどん上がり、ゲームそのものへの愛着も増していきます。

ゲームをやらない人にはなかなか理解できなくとも、プレイヤーからすれば唯一無二の大切なデータとなります。

これがソーシャルゲームをプレイし続け、課金を重ねる動機に繋がっていきます。

自動車のディーラーも利用する保有効果

車を売るなら、なるべく高い金額で売りたいのは誰でも同じです。

ただ、『自分が大切に乗ってきた車だからこそ価値が高くあって欲しい』という心理も存在します。

新車を買おうとする人の多くは、新車の値引き額より、今所有している車をいかに高い値段で引き取ってもらうかに関心を寄せます。

そこでディーラーは、引き取り額を高く設定するかわりに新車の購入取引を持ちかけ、『良い取引』に思わせるのです。

購入前は冷静な判断が出来たのに、一度手にしたら評価が変わってなかなか手放せなくなる、それが人間というものです。

実際は使っていないのになかなか捨てられないものが増えていくのも同じ理由です。

意志決定する前に、本当に必要なものなのかを見抜くことが大切です。

参考 Endowment Effect - The Decision ...

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