『国民年金の未納率が4%』←どう解釈する?全員が間違える
「第一印象」の影響力は想像以上!?
私たちは、あらゆる事象に触れるとき、第一印象や最初に与えられた情報に強く影響を受けています。
行動経済学などの世界では、これを初頭効果と呼びます。
商品のキャッチコピーや新聞の見出しなどでも、この初頭効果によって私たちはさまざまな早とちりをします。
例えば『国民年金の未納率が4%です』という新聞の見出しを目にしたとします。
未納が半分近くもあるというインパクトから、『将来の年金が危ない!』などと紐付けて考えがちです。
しかしよく記事を読むと、未納なのは自営業者、学生、無職の人などの『1号被保険者の4割』であり、そこにサラリーマンや公務員(2号被保険者)、専業主婦(3号被保険者)は含まれないとのことです。
更に、さまざまな事情により年金が払えない人には、税金がカバーする免除などの施策がとられているので、実際に多くの人がイメージするであろう『意図的に払っていない人』は数%に過ぎないのです。
ところが私たちは、最初に目にした情報をイメージしやすい現実と結びつけて考えてしまうのです。
人の評価は、なかなか覆らない
この初頭効果は、人の評価にもよく適用されます。
例えば、あなたがプレゼン資料を作る仕事を新人Aさんに任せたとします。
彼はメールにも即返信し、質問があれば席に来て疑問点を解消し、決められた期限より1日はやく資料をあげてきました。
あなたは『なんだか今年の新人は優秀だな』と思うかもしれません。
一方、同じ内容を新人Bさんにお願いしたところ、メールの返信が遅いうえ、締め切りを1時間過ぎて出してきた資料が誤字だらけだったとします。
もしかしたら、Aさんはたまたまそのとき他の業務がなく、すぐに対応しやすい状況だったのかもしれません。
かたやBさんは他の仕事にたまたま追われていた時期で、実際は非常に優秀なのかもしれません。
しかし最初に得た『Aは優秀でBはダメ』という印象は、その後はなかなか覆らないことが多いのです。
例えば、その後Aさんが何か失敗をしたとしても『調子が悪かったのかな』などと、最初の印象を肉付けするような、偏った解釈をすることすらあります。
それほど、私たちは、最初の印象に基づいて現実を捉えてしまうのです。
このように、一面的な人事評価を進めてしまうと、社員本来の優秀さを生かしきれず、本人にとっても企業にとっても不幸な結果を招くことも少なくありません。
分かりやすい見出しや第一印象などによる初頭効果には騙されず、むしろ逆手にとって自分の印象付けに活用してみてはいかがでしょうか。
参考 Primacy effect