読んだ人が暴動を起こす禁断の書「悪魔の詩」とは

イスラム教を侮辱したとして翻訳者が殺された 『悪魔の詩』

日本人は無宗教だと考える人は多いです。

家がお寺の檀家でも、仏教に熱心に帰依する人はそう多くないでしょう。

しかし世界には、自分が信じる信仰を侮辱されたと感じると憤り、過激な行動に出る者もいます。

ときには宗教上の大問題に発展して、 多数の死傷者を出すこともあります。

1988年に出版された「悪魔の詩」 は、 そんな事件を引き起こしたいわくつきの書です。

同書は、インド出身でイギリスの作家サルマン・ラシュディによる小説です。

ジャンボジェット機から墜落した二人のインド人俳優が大天使ジブリエールと悪魔になり、時空を超えた世界へ行ったり、夢の世界をさまよったりする物語です。

文学的には高い評価を受けましたが、ムハンマドの妻と同名の女性を娼婦として登場させたりしたことが、イスラム教への冒涜だとして大問題になります。

これを受け、多くのイスラム教国では禁書となることが決まりましたが、それでもインドやパキスタンをはじめとして世界各地でデモや暴動が発生し、多数の死傷者を出すことになってしまいました。

1989年には、イランの最高指導者のホメイニ師が、恐ろしい指令を出しました。

悪魔の詩の著者とその内容を知っていながら出版に関与した者を殺害するよう、イスラム教徒に命じたのです。

ラシュディはイギリス政府の保護下に置かれて難を逃れましたが、それで問題は収束しませんでした。

世界各地で、同書の翻訳者が襲撃される事件が相次いだのです。

1991年7月12日には、なんと日本において、翻訳者が殺害される事件が起きました。

イスラム教研究者で同書を翻訳した五十嵐一(いがらしひとし)が、勤務先の筑波大学の構内で刺殺されているのが発見されたのです。

事件の3日後、イランの反政府組織が犯行声明を発表し、日本に衝撃を与えました。

犯人はいまだに捕まっていません。

参考 The Satanic Verses | Synopsis, Fatwa, Controversy, & Facts

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