「死」が信仰対象?メキシコの呪術的な宗教
ヴァチカンが嫌う新興宗教
外務省のホームページによると、メキシコは国民の約9割がカトリックだといいます。
しかし、熱心な信者は減少傾向にあり、代わってヴァチカンの嫌うある新興宗教が、勢力を拡大しています。
それがです。
サンタ・ムエルテとは直訳で「死の聖人」を意味します。
その名の通り、死を信仰対象にした呪術的な宗教です。
信者が祈りを捧げるのは、大鎌を手にする骸骨の偶像です。
これだけ聞くと死神をイメージしますが、骸骨が身にまとうのは黒いローブではなく、赤やピンク、黄色に緑といった、派手な色のローブやドレスです。
このミニチュア像をお守りのように持ち運ぶ者もいれば、人間大の偶像のためにマリファナの煙を吐きかける者もいます。
そうした需要があるからなのか、サンタ・ムエルテ像を販売する売店も少なくありません。
なぜこのような信仰が広がっているのでしょうか。
元々は、2001年、テピート地区に暮らす女性エンリケタ・ロメロが祭壇を設置したことにあります。
同地区は、治安が不安定で犯罪や死が身近な貧困地帯です。
現実への不安を抱きながらも、伝統宗教は死を積極的に取り扱いません。
この穴を埋める形で、サンタ・ムエルテが広がっていったのです。
信者の中にはカトリックに帰依する者が少なくありませんが、ヴァチカンの司教のひとりはサンタ・ムエルテへの不快感を示しており、共存は難しいとされます。
2012年には、ヴァチカンを不安にさせるある出来事が起きています。
死の聖人に生き血を捧げるため、信者8人によって、少年2人と44歳の女性が殺されたのです。
そんな事件が起きたあとでも、サンタ・ムエルテ信仰は勢いを失っていません。
むしろ、貧困層や犯罪者など、社会の裏側にいる人々の間には、着実に浸透しています。
死の不安に悩まされる人が減らない限り、こうした信仰は止まないでしょう。
参考 Who Is Santa Muerte?