性病患者をわざと治療しなかった「タスキギー梅毒実験」
梅毒患者を実験のためにあえて治療しなかった
患者をあえて治療せず、新たな罹患者が見つかっても観察材料にして放置する…。
そんな恐るべき実験が、1930年代のアメリカで行われていました。
実験は、1972年7月に掲載されたニューヨーク・タイムズの一面トップ記事によって、広く知られるようになりました。
記事によれば、米国公衆衛生局管轄の性病部医師たちにより、アラバマ州タスキギー及びその周辺の黒人梅毒患者399人に対し、1930年から故意に治療を行わなかったと書かれていました。
しかも、医師たちは梅毒に感染した患者が見つかっても放置していたといいます。
研究の停止が表明されたときには28人が死亡、約100人の患者が失明や精神障害を被っていました。
なぜこのような無慈悲な実験が行われていたのでしょう?
実はこの活動は、元はまっとうな慈善団体による事業でした。
当時、梅毒は死の病であり、治療が難しく資金を用意するのも簡単ではありませんでした。
アメリカ公衆衛生局の協力を得た慈善団体によって同地で梅毒の治療が行われることになりました。
しかし、慈善団体は資金不足により数年で撤退、すると残留した公衆衛生局は、タスキギーの黒人を患者とはみなさなくなりました。
治療法が見つからない梅毒は、どのように人体に蔓延し、死に至るのでしょうか。
患者たちは、その疑問を解決するための観察材料に変更されたのです。
しかも、実験期間の間に特効薬ペニシリンが登場したにもかかわらず、医師たちは目的を果たすために、黒人患者たちに与えようとはしませんでした。
事件を報じたのはニューヨーク・タイムズですが、明るみに出たのは内部告発があったからです。
裏を返せば、告発がなければ、その後もずっと梅毒人体実験が継続していた可能性もあったのです。
参考 Tuskegee Experiment: The Infamous Syphilis Study