敵国とそのライバルとのバランスを保つ『オフショア・バランシング』とは?
自分は戦わずしてバランスをとるアメリカ
アメリカが行っているオフショア・バランシングなる戦略を最初に考えたのはイギリスでした。
イギリスは島国で、ヨーロッパ大陸とは短い海を隔てた場所にあります。
イギリスはいつもオフショア(沖合い)から観察していて、ヨーロッパに敵国が現れると、その国がそれ以上強くならないようにライバル国を煽って両国を戦わせ、バランスを保っていたのてす。
例えば第二次世界大戦でドイツが強くなったとき、かつてのライバルだったフランスやソ連、アメリカを仲間にし、ドイツを押さえこみました。
バランスをとるため、手を組む相手を変えていく現在は、アメリカがこのオフショア・バランシングを戦略に取り入れ、 世界最強の座を守っています。
冷戦時代でもソ連が強くなると、西ヨーロッパや日本と連携してソ連を押さえこみました。
また、1970年頃は日本で経済が発展していくとそれまで仲の悪かった中国と仲良くして日本を押さえこみ、昨今は日本やインド、オーストラリアなどと連携して強くなった中国を押さえこもうとしています。
誰も望まない大国同士の核戦争
冷戦中、アメリカもソ連も最悪のシナリオである核戦争を回避するため、戦争以外のさまざまな方法で争っていました。
しかし、実は核戦争まで一歩手前のとても危険な状態までいったことがあります。
それが、 1962年のキューバ危機です。
アメリカの南に位置する島国のキューバに、ソ連の核ミサイル基地が建設されているのをアメリカの偵察機が発見しました。
キューバのような近い場所にライバル国ソ連のミサイル基地がつくられてしまうと、アメリカは常に銃を突きつけられているような状態になります。
アメリカはそれ以上ソ連の船がキューバに近づかないように海上を封鎖し、ソ連とはさらに険悪な雰囲気になりました。
このとき、もしどちらかが動いていれば、2大国間の核戦争に発展する可能性はあったでしょう。
かく言うアメリカもソ連をねらえる場所にミサイル基地を持っていた
当時のアメリカ大統領ケネディとソ連のトップであるフルシチョフが妥協点を探り合いました。
互いに核戦争は避けたいという意見は一致しており、ソ連がキューバの基地を解体することで戦争は回避されました。
しかし、実はそんなアメリカもソ連に近いトルコにソ連の首都を攻撃できるミサイル基地を持っていました。
つまり、もともと自分は攻撃できる状態であり、相手も同じ状態になろうとしただけだったのです。
アメリカの自己中心的な考えに、ソ連も我慢ならなかったでしょう。
兵士からお金や武器の支援へ変わってきた戦略
最近のアメリカの場合、自国の軍隊や兵士を送りこんで一緒に戦うのではなく、周辺国に武器やお金を支援して戦わせるという方法をとっています。
アメリカはこうすることで自国の兵士が犠牲になる被害を最小限にしようということです。
2022年に起きたウクライナ侵攻でも、 アメリカは軍隊を送らず、 武器やお金でウクライナを支援しています。
参考 Offshore balancing | Power Politics, Realism & ...