言葉のせいでコミュニケーションの質が下がることは珍しくない!
言葉の限界
『言葉にしなければわからないこともある。』
『言葉にしなくても通じ合う。』
人が言葉なくして意思の疎通をとることは困難です。
しかし、言葉がコミュニケーションを円滑化するどころか、むしろ邪魔をすることがあることをご存知ですか。
人の顔と記憶に関する興味深い実験があります。
AとBの2グループの人々が、6人の顔写真を見ます。
Aのグループには、その写真についていろいろと言葉を交えて考察して話し合ってもらいます。
いっぽうBグループは、見るだけで何しないようにしました。
一週間後、2つのグループは、新たに10人の写真を見ます。
ただし、その10人のうち1人だけ、前回見た人物が含まれています。
そして、どれがその人物だったのかを当てるのです。
AとBのグループで、うまく当てられたのはどちらだったと思いますか。
実はBの、言葉を介さなかったグループの成績のほうが良かったのです。
この事実は、言葉の限界を示唆しています。
言葉は最高のコミュニケーションツールですが、それは同時にその意味や判断を相手に委ねることになります。
また、言葉自体の解釈や使い方も、人によって少しづつ異なります。
例えば「青」という言葉を聞いてまず『暗い、冷たい』と感じる人もいれば、『冷静、爽やか』とイメージする人もいます。
言葉は意思の疎通においてこの上なく便利な発明ですが、同時にいくらかの妥協を強いられることになるのです。
先ほどの実験の結果は、人の写真を言語化したことで思考が歪曲された実例です。
これを行動経済学では言語隠蔽効果や事後情報効果と呼びます。
人は、大切なことほど人に伝えたいと考えます。
しかし大切だからこそ、あえて言語化せずにおうべきというのもまた、真理なのです。
参照 The verbal overshadowing effect: why descriptions impair face recognition - NCBI