ウクライナではNATOと、シリアではアメリカとの代理戦争を強いられるロシア

※この記事は 2023年11月 の世界情勢と歴史をもとに執筆されたものです。
東西で意見の分かれるウクライナ

ウクライナはもともとソ連を構成する国の1つでしたが、ソ連崩壊とともに独立をはたした国です。

ウクライナには変わった特徴があり、国内の西側に住む人たちはヨーロッパ人に近い人が多く、東側の人たちはロシア人が多いため、同じ国の中で考え方が大きく違っています。

なので、大統領を決める選挙でも、ヨーロッパ派とロシア派のトップが交互に現れたりします。

ロシアとしては、ウクライナの政権が不安定になるのは都合が良くありません。

ウクライナ戦争は2014年から始まっていた?

ウクライナで2014年、クリミアにあるセヴァストポリ港欲しさに、ロシアがウクライナのクリミアという領土を奪う事件が起きました。

ここはロシアがもっている黒海艦隊を自由に動かせる場所です。

クリミア半島は黒海にあり、ボスポラス海峡ダーダネルス海峡を抜け、地中海やスエズ運河の方面に出るための絶好のスタート地点になります。

ロシアとしては喉から手が出るほど欲しい港だったのです。

クリミアをロシアが奪ったことで、ウクライナの西側のヨーロッパ派住人と、東側のロシア派住人の間で内戦が起きました。

ロシアはクリミアだけは確保しようと、軍隊を使ってクリミアをロシアの中にねじ込んでしまいました。

これがウクライナ紛争と呼ばれるものです。

2022年、ついにウクライナに侵攻したロシア

2014年に始まったウクライナ紛争以降も争いは続き、2022年にはロシアが『ウクライナのロシア人を助ける』との名目でウクライナに侵略を始めました。

ロシアの言い分は『2014年から続くウクライナの内戦で、ウクライナがロシア派の人たちを殺していて、それを助けるための侵攻だ』というものです。

しかし、そう主張している内戦はそもそもロシアが自分たちの都合でクリミアを奪ったことにより起こった争いです。

ロシアの言い分は単なる正当化と考えられても仕方がないでしょう。

ウクライナ侵攻とソ連崩壊の深い因果関係

ソ連崩壊後に独立した旧ソ連の国は、ソ連の敵だったNATOに次々に加盟していきました。

NATOは世界で一番大きな軍事同盟なので、ロシアに勝ち目はありません。

そこにロシアの隣のウクライナまで加盟してしまうということは、敵であるNATOと隣接するということです。

ロシアはNATOに入る前のウクライナを自分たちの手下にし、NATOとロシアの間にウクライナという緩衝地帯をつくりたかったのです。

ウクライナ侵攻では、NATO加盟国や日本など、多くの国がウクライナの味方に回り、食料や兵器、お金を支援しており、ロシアとの貿易を止めたりと経済制裁を行っています。

しかし、ロシア側も負けを認めず、NATOのヨーロッパ諸国や日本に経済制裁をやり返し、ウクライナには連日攻撃を続けます。

この戦争は、ウクライナを戦場にしたロシア対NATOの代理戦争であると言えます。

ロシアの中東での戦略

ロシアが中東で影響力を高めるために行っているのが、シリア内戦の支援です。

シリア内戦は、我儘な指導者を倒そうとするアラブ諸国のデモがきっかけで始まりました。

2011年、アフリカのチュニジアで起こった独裁政権を倒そうというデモが発端となり、エジプト、イエメン、リビアなどに広がり、次々とアラブ諸国の独裁政権が倒されていきました。

この動きをアラブの春と呼びます。

アメリカとロシアの代理戦争に発展したシリアのデモ

2011年にシリアで大規模なデモが起きた際、当時のアサド大統領は力でデモを押さえつけようとしたため、民衆の怒りは最高潮に達しました。

民衆な武器を持って戦い始めたことで、政府軍vs反政府軍の大きな紛争へと発展しました。

シリアと仲良しのロシアが政府軍を支援し、反政府軍にはアメリカが支援を始めたことで、内戦は結局『ロシアvsアメリカの代理戦争』へ様変わりしました。

政府軍が勝利すれば、ロシアは中東での影響力、石油、 新たな活動拠点など、得られるものがたくさんあります。

一方アメリカは中東からは手を引きたいと考えていますが、ロシアの中東での影響力の拡大を恐れるあまり退くに退けない状態が続いています。

最近は政府軍側が優勢と言われていますが、2023年現在、行く末は定かではありません。

参考 Why has the Syrian war lasted 12 years? - BBC News

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