大統領制のアメリカに存在した『皇帝』

アメリカに国王は存在したのか

19世紀のアメリカには、皇帝と呼ばれる人物がいました。

それがイギリス出身のジョシュア・エイブラハム・ノートンです。

ノートンは1849年にサンフランシスコへ渡り、土地の投機などで莫大な富を得ました。

しかしその後、事業に失敗して財産を失ったことで精神を病み、自分が皇帝であるという妄想に取り憑かれてしまいます。

やがてノートンは地元の新聞社に、合衆国皇帝としての宣言を布告するよう要望しました。

それを同社がジョークとして掲載したことから、ノートンの名が知られるようになりました。

普通ならば狂人扱いされてもおかしくありませんが、ノートンが温厚な性格であったことから、市民は彼の妄想に付き合うようになります。

ノートンが生活費を工面するため額面50セントの「帝国債権」を発行すると、人々は快く購入しました。

また政府も彼の妄想を受け入れました。

ノートンがときの大統領エイブラハム・リンカーンにイギリス女王との婚姻を勧める電報を打ったところ、「真剣に検討したい」との返信があったといいます。

さらには日用品も提供され、レストランも無料という、まさに皇帝の扱いを受けたのです。

1880年1月、ノートンはこの世を去りましたが、市民はその死を悼み、葬儀には3万人もの参列者が集ったといわれます。

参考 Emperor Norton: Life & Legend

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