全てが歪んだ鏡の様?小麦から作られる強烈な幻覚剤
小麦から幻覚剤をつくることができる
小麦は多くの料理に用いられている食材ですが、その一方、麻薬を生み出した植物でもあることをご存知でしょうか。
実は、麦の穂は麦角(ばっかく)と呼ばれる菌に寄生されると、アルカロイド系の毒物を発生させる性質を持っているのです。
そして、この菌に冒された麦を摂取すると、手足の壊疽や筋肉の痙攣など猛烈な中毒症状に襲われます。
いったん流行すると数千人規模の犠牲者が出るため、中世の人々からは非常に恐れられていました。
しかし1943年、スイスの化学者アルベルト・ホフマンは、麦角に幻覚作用があることを発見します。
ホフマンは微量の麦角が指に付着した際、「全てが歪んだ鏡に映っているかのような」幻視を体験しました。
そして、麦角をもとに開発されたのが幻覚剤のLSDでした。
LSDは服用すると陶酔感が得られ、五感が鋭敏になることから、当初は精神療法などの分野で活用されました。
しかし、1960年代のアメリカでヒッピーを中心に濫用が広がり、妄想や精神錯乱などの副作用も知られるようになったため、 世界各国で違法薬物に指定されていきました。
現在、麦角菌は製粉段階で除去されるので体内に入る心配はありません。
もちろん小麦をどれほど摂取しても幻覚を見ることはありませんのでご安心を。
参考 Ergot fungus | fungus species