実験のために約10億個のピロリ菌を飲んだ男

ピロリ菌を飲んでノーベル賞を受賞した医者

胃炎の原因の一つとされる、ピロリ菌

それを自ら飲み干した医師が、 オーストラリアのバリー・マーシャルです。

無謀な行為のきっかけは、同じ病院に勤める病理学者が、慢性胃炎に悩む患者の胃の粘膜かららせん形の細菌を発見したことでした。

当時、胃炎の原因はストレスだというのが定説でしたが、マーシャルはこの細菌こそが原因ではないかと考えました。

実際、この細菌を持つ患者に抗生物質を投与すると、胃炎が簡単に治ってしまいました。

この経験から「胃炎は細菌による感染症」と仮説を立て、菌にヘリコバクター・ピロリ菌と名付けました。

しかし、ラットや子ブタなどを使った動物実験は失敗ばかりで、仮説を証明することはできませんでした。

そこで、人間と他の動物では結果が異なると考えたマーシャルは、約10億個のピロリ菌を少量の水に溶かしたものを飲んだのです。

自飲実験から10日目、マーシャルは狙い通り急性胃炎になり、仮説を証明することに成功しました。

ところがこのピロリ菌除去による胃炎治療が一般の医師に浸透するまでに長い歳月がかかりました。

同僚とともにノーベル医学生理学賞を受賞したのは、体を張った実験から20年以上経った2005年でした。

参考 Barry J. Marshall – Facts - NobelPrize.org

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