時速1000kmで急ブレーキを踏むと視界が赤く染まった

身を削って限界を証明した世界最速のブレーキ実験

1954年12月、アメリカ・ニューメキシコ州の空軍基地で、ある命がけの実験が行われました。

それは、空軍大佐ジョン・ポール・スタップを乗せた台車を猛スピードで走らせ、時速1000kmに達した時点で急ブレーキをかけるという危険なものでした。

もともとスタップは、 戦闘機が急減速する際に人体にどのような影響があるかについて取り組んでいました。

彼はその検証のため、自らの身体を提供したのです。

実験では、戦闘機の速度に近づけるため台車に9基のロケットエンジンが搭載され、台車が走るレールの長さも約1kmにわたりました。

台車がスタートしてブレーキがかけられたのは3.5秒後でした。

衝撃でスタップの目には一気に血液が流入し、毛細血管が破れ視界が赤く染まりました。

それは、麻酔無しで抜歯されるような激痛であったといいます。

またブレーキによりかかった負荷は約40G、それはつまり体重の40倍です。

それまで人体が耐えうる負荷は18G程度とされていましたが、彼は身をもって定説を覆したのです。

スタップは実験をやり遂げたことで、スピード違反を犯しているとはいえ「世界最速の男」と称されました。

参考 John P. Stapp

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